【Vol.3】怪物が雄たけびを上げる日~福岡ソフトバンクホークス松坂大輔~

「栄枯盛衰」って言葉がある。

栄えたり、衰えたりを繰り返す人の世の儚さ・・・

 

企業でもそうだ。

戦後日本の焼け野原において「0から1」を築き上げてきた東芝SHARP・・・

不景気の波にのまれ、本来のあるべき姿を失ってしまった。

外資系企業との製造争いに敗れたなんて聞きたかないね。

 

ここで、松坂大輔だ。

今でも覚えてるよ。

1998年の夏の甲子園

PL学園との延長17回250球の激闘。

明徳義塾戦では奇跡の逆転勝利。

そして、決勝の京都成章戦ではまさかのノーヒットノーラン

 

メディアは「平成の怪物」と騒いだ。

当時の横浜高校は後のプロの世界に飛び込む、後藤武敏小山良男小池正晃といったリアルドリームチーム。

 

その他にもライバルたちは、浜田の和田毅、東福岡の村田修一、高知の藤川球児といった後のプロ野球界でも大活躍する。

まさにドカベンの世界だ。

 

メディアは彼らを「松坂世代」と呼んだ。

 

そして、世代の主役である「怪物」は1998年のドラフトで西武ライオンズに1位指名される。

1年目の成績は16勝5敗(完封2)、防御率2.60でぶっちぎりの新人王。

これかなりすごいぜ。

先日、日ハムに入団決定した清宮君がいきなり3割、30発、100打点をかますようなもんだ。

ちなみにダルビッシュの1年目は5勝5敗、防御率3.53。

これでも十二分にすごいのだが・・・

 

成績もさることながら怪物の言動はさらなる注目を浴びた。

当時ロッテのエースだった黒木知宏との投げ合いに敗れた後には「リベンジします」とぶっこみ、次戦では見事に「1対0」の完封勝利。

「リベンジ」は同期入団の上原浩治の「雑草魂」とともに流行語大賞を獲得した。

イチローとの対戦では、3打席連続の三振に仕留め「プロでやれる自信が確信にかわりました」と結果で全てを証明し続けた。

1999年シーズン18歳の少年が日本のど真ん中で雄たけびをあげていた。

 

当時のパ・リーグは松坂を中心に回っていた。

 

2007年には海を渡り、ア・リーグの伝統球団「ボストンレッドソックス」と契約を交わし、1年目15勝、2年目18勝と海の向こう側でも怪物ぶりを発揮していた。

 

2009年のWBCでは2大会連続の優秀選手。

 

順調すぎた。

2009年のWBCまでは順調すぎた。

 

その後、怪物は度重なる怪我に見舞われ、成績を落としていく。

長年の勤続疲労の影響かもしれない。

中6日が当たり前の日本とは違い、メジャーは中4日だ。

それも影響したかもしれない。

2013年には新天地である「ニューヨークメッツ」に移籍。

2014年には中継ぎをメインに34試合登板。

 

そして、復活の手ごたえをつかみ2015年に日本球界に復帰。

2015年から3年契約年棒総額12億円で世界の孫正義率いるソフトバンクホークスと契約締結。

 

このニュースを知ったとき、不安、期待やなつかしさと様々な入り混じった感情を抱いたことをつい昨日のように思い出す。

 

結果は、わずか1試合にのみ登板。

対戦した打者は10人で防御率は18.00・・・

 

結果以上に終わりなきリハビリを続ける怪物のニュースは正直悲しかった。

そして、2017年11月3日ソフトバンク退団決定。

 

奇しくも、ソフトバンク日本シリーズで頂点を極める1日前だ。

 

葛藤があったのだろう。

年棒をもらっているのに何もできなかった。

日本一という「輪」に自分も入りたかった。

 

コーチの話を断り、他球団での現役続行を希望。

 

「俺はまだ終わってない・・・」

 

松坂の心の声が聞こえる。

 

ソフトバンクでの3年間を給料泥棒という人間もいる。

ただ、そんなことは結果論だ。

多くの人間が結果で物事を語る。

プロだったら当たり前だ・・・それも納得できる。

 

納得はするが忘れてはいけないこともある。

松坂はこれまで日本球界だけでなく、メジャーも盛り上げた。

そして、貢献もしてきた。

正直なところ第1回も第2回も松坂抜きではWBCで世界一になってない。

過去にフォーカスするなんて反則かもしれない。

 

「復活してくれよ・・・」

 

そんなことは言わない。

ここまできたら思う存分、野球人生を全うしてくれよ。

怪物と呼ばれた男の「生き様」を見せてくれよ。

 

栄枯盛衰・・・

誰にでもそれはある。

正直、松坂の選手としての時間は刻々と短くなっている。

時間とは生き様だ。

 

残りの時間、記録なんてどうでもいい。

ファンの記憶に残るように全うしてもらいたい。

 

松坂へ、がんばれ。

一人の松坂ファンより。